滋賀県には9つの地場産業が産地を形成しています。
「彦根バルブ」は、そのうちの1つでバルブを製造する27社前後のブランドメーカーと、それを支える70社~80社の関連企業が彦根市を中心に集結し、県外や国外へも事業を拡大して滋賀の経済を支えています。
滋賀バルブ協同組合は、滋賀県の地場産業「彦根バルブ」を製造する事業者で構成される組織です。




ビワライトの優れた点 【環境に配慮した4つの特徴】



用 途
ー飲み水に関係する部分だけでなく、様々な箇所で使用されていますー
ビワライトは、水栓機器・水道用資機材・バルブ本体・バルブ部品・ブッシュ・ボイラー部品・ポンプ・軸受等工業用材料に幅広く利用できます。
→ 鉛は加工しやすく安価な金属であるため、これまで多くの工業用製品に使用されてきましたが、人間の体内に蓄積すると中毒症状を引き起こすリスクや廃棄の際にリサイクル出来ないことなどから近年は様々な分野で鉛フリー化が進められています。
ビワライト誕生の背景
ー開発のきっかけー
これまで長年にわたり、鋳造(※1) された青銅製品には鉛が使用されてきましたが、有害性から規制が強まり、鉛を使わない銅合金が求められるようになりました。
そこで、希少な金属を使わず、コストを抑えてリサイクル可能な銅合金の開発を目指し、多くの成分で試験を行った結果、硫黄が鉛の代替に最も適していると分かり、ビワライトの開発に成功しました。(※1)溶かした金属を型に流して製品を作ること
ー逆転の発想で製品化に成功ー
硫黄 が鉛の代替として最適な材料であることは実証できましたが、そこに至るまでの道のりは簡単ではありませんでした。実は硫黄をそのまま銅合金に加えると金属の強度が落ちてしまうためです。
しかし、鉄に硫黄を加えると化学変化が生じて「硫化鉄」という別の安定した物質になることに注目し、同じように銅合金でも鉛の代わりに硫黄を使えないかと考えました。
試行錯誤の末に研究を重ねた結果、適切な添加方法を見出し硫黄を硫化物として銅合金の中で分散させることに成功しました。従来は困難とされてきた組み合わせに挑戦し、逆転の発想で製品化に成功したのです。
今後に向けて組合の想い
近年、銅をはじめとしたあらゆる工業材料の価格が高騰しています。レアメタル(希少金属)の輸出規制が実施され、自国の産業保護のために輸入品に高額な関税が課せられるケースも見受けられます。しかし、不確実な世界情勢に関係なく地球上の資源は有限です。それは過去も未来も変わりありません。
ビワライトの開発は、限られた資源で持続可能な生産活動を実現するための挑戦でした。イノベーションを生み出すには、目標と挑戦が必要なのです。私たちはこの姿勢をものづくりの事業者として今後も大切にしていきたいと考えています。地域に根差した地場産業だからこそ、地域と共に発展していくことが求められているからです。

私たちはものづくり企業としてビワライトをはじめ、様々な取組を通じて環境負荷低減に努めています。
製品化が進むビワライト
組合で開発されたビワライトは、組合員により製品化され、私たちの暮らしを支えています。
彦根市ではビワライト材を利用した水道メーターが採用されていることを紹介しましたが、それ以外に「メタルシート仕切弁」として活用されている事例を紹介します。
「メタルシート仕切弁」
この「メタルシート仕切弁」にビワライトを採用した製品が組合員により製造・販売されています。
メタルシート仕切弁は操作性に優れ、高い耐震性と耐久性を実現できたことが特徴です。そこにビワライトを使用したことで環境への配慮も高まり、さらにものづくり企業として自信を持ってお勧めできる製品となりました。
この製品は鉛不使用で環境にも配慮した製品として評価されています。
水環境課題に貢献する製品として、滋賀県の「ビワコプロダクツ」に選定されています。
硫化物分散型鉛フリー銅合金鋳物「ビワライト」(BIWALITE)
「ビワライト」の誕生
滋賀バルブ協同組合は、組合の共同開発事業として、関西大学工学部先端マテリアル工学科、滋賀県立東北部工業技術センター、当組合員の銅合金鋳物メーカーによる産・官・学連携で、鉛フリー銅合金の開発研究を行ってまいりました。
Bi(ビスマス)やSe(セレン)添加の銅合金鋳物、表面処理で鉛の溶出を抑制する方法が開発されるなか、新材料開発のコンセプトとして、稀少で高価な化学物質を使用せずコスト面を重視し、安定した鋳造性の確保、リサイクル可能な材料の開発に主眼を置きながら取り組んでまいりました。
大学における基礎研究、組合員銅合金メーカーでの鋳造実験、工業技術センターでの各種試験研究、さらには組合員バルブメーカーでの切削性能評価試験などを繰り返し行い、CAC406の特性を維持した鉛フリー銅合金鋳物の開発に成功組合ではこの新素材を「ビワライト」(BIWALITE)と命名、すでに特許を取得、商標登録も行っています。
「ビワライト」とは
CAC406の鋳造時に鉛を添加していたものを、鉛に代わりS(イオウ)を配合溶解することにより、デンドライト間の隙間にCuとZnの硫化物を形成させたもので、耐圧性、切削性、耐摩耗性、固体潤滑性が良好な銅合金鋳物。
特性と特徴
- Bi(ビスマス)やSe(セレン)などの高価で稀少な化学物質を使用しないので、コストアップが少ない。
- ザク巣の発生が少なく、鋳物の流動性が良好。
- 化学成分の量や配合比率を調整することにより、要求する強度や伸びの鋳造品の製造が可能で、用途拡大ができる。
- 一定の化学成分を前もって廃合したインゴットにより、簡単に鋳造ができ、歩留まりが良好。
- 特殊な化学成分を使用しないので、リサイクル、再溶解が可能。
- ローズ指令にも適合。
期待される用途
バルブシート(水道バルブ用)、ブッシュ、水栓金具、擦動部品(自動車部品)、ポンプ、ボイラー、各種バルブ部品など、CAC406材料からの切り替えを要する部品等への適応が期待される。
性能試験結果
(1)ビワライト組織写真
(2)機械的性質
引張強さ(N/mm2) | 伸び(%) |
200~250 | 15~28 |
(3)切削性
(4)耐圧試験
供資材 | 成分調整した鉛フリー銅合金(ビワライト)、52種類×各6種類 |
試験条件 | 水圧 3MPa、2分間保持、目視検査 |
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(5)浸出試験
検査機関:夏原工業株式会社
項 目 | Cu | Pb | Cd | Zn |
数 値 | 0.0018 | 0.0001 | 検出せず | 0.001 |